唐突にウールリッチについて語る:「ぎろちん」

ギロチンがテーマのミステリ・怪奇幻想ものというのをぼんやりと考えていた。
私が読んだものでは
・コーネル・ウールリッチ「ぎろちん」
・アーヴィン・S・コッブ「信・望・愛」
・高木彬光「人形はなぜ殺される」
・山村正夫「断頭台」
・山田風太郎「明治断頭台」
かなあ。
あとネタバレなので作品は伏せるけれどモーリス・ルヴェルにも。
(1月8日追記:友人から指摘のあった合作「江川蘭子」もいいね!


春陽堂から発売されたやつのページはこちらに)

木魚庵さんから金田一パスティーシュにもあると教えていただいた。


(2024.2.25追記 読みました→こちらへ)

首がたくさんチョンパされる二階堂黎人「人狼城の恐怖」では意外にもギロチンが使われてはいなかった記憶。
カーター・ディクスン「赤後家殺人事件」等は未読。

中学生の頃に出会った間羊太郎「ミステリ百科事典」はたくさんの読んでみたいと思える作品をネタバレと共に教えてくれた名著。
文春文庫ページはこちら

私の所有は現代教養文庫。

これで知ったのがウールリッチの「ぎろちん」(原題「Guillotine」1939年)

ハヤカワポケミス収録。hontoのページ(現在絶版だけど)はこちら
「ミステリ百科事典」には結末まで書いてあったけれど、実際に読むと短いけれどとても面白い作品。

<あらすじ>
死刑囚の男ラモンがいた。
彼を愛する女バベットがいた。
女はなんとしても男を死刑から救いたかった。
特赦の可能性はひとつだけ。それは万が一の偶然で死刑執行吏が亡くなったときにはその番にあたった死刑囚は特赦を受ける慣習があるということ。
だが「ああした連中は長命」でそんなことは4、50年に一度あるかないか。
女は執行吏モンテスキューに接触の機会を得、死刑執行前日に彼の家を訪れた。
翌朝に食べるビスケット用の練り粉を老家政婦が準備している。
絶好のタイミングに女は練り粉に毒薬を混入した。
死刑の日、男は処刑台に引き立てられる。執行吏が来ないことを望みながら。
執行吏はフランス唯一の「どうあってもやらねばならぬ仕事」の権利を持つ者。
監獄に向かうために列車に乗っている最中に腹部に奇妙な重苦しさを感じ、それはだんだんと増していく――

ウールリッチあるあるの「愛の終わり」と「タイムリミット」を描いた作品。
女が執行吏に接触した手段は性的に篭絡というものではなく、ウールリッチあるあるの「そりゃ無理がねえか」なもの。

そして児童書としても発行されている。(これは昭和40年発行の盛光社ジュニア・ミステリ・ブックス)
ここではラモンとバベットは恋人ではなく、親友同士で悪事をはたらき、バベットは友を救うためにとなっているが、バベットはこの名のまま男性という設定と思われる。(一人称は「おれ」で挿絵も男性)

フランスではギロチンによる死刑は1981年に廃止となった。
最後の処刑は1977年。
1981年に就任したミッテラン大統領が死刑反対を公約として当選。
2006年にシラク大統領が死刑を禁止する法案の改正を発表し、2007年に憲法に死刑の廃止が明記された。

Wikipediaより引用
首都であるパリの処刑人はムッシュ・ド・パリ(Monsieur de Paris)の称号で呼ばれ、フランス全土に160人いる死刑執行人の頭領になっていた。その後ギロチンの導入で省力化が進んだ結果、1870年11月以降は死刑執行人がフランス全土で1人になり、ムッシュ・ド・パリは事実上、死刑執行人の称号となった。

なので、作中での時期ははっきりしていないが書かれた1939年には確かに死刑はギロチンによるものであり、執行人もひとりしかいなかった。

私が実際にギロチンを見たのは明治大学博物館刑事部門に展示されていたレプリカ。
そしてここには鋼鉄の処女(アイアン・メイデン)もある。
鋼鉄の処女のミステリといえば大倉燁子「鉄の処女」(優れたサルノベでもあり!)、ネタバレになるブラム・ストーカーの名作や横溝のノンシリーズ短編あたりでしょうか。
ちょっといろいろ読んでみたいです。

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