朗読劇「病院横町の殺人犯」観ました

2月24日にイベントVoice & Book Vol.3サルノベ!が開催されました
こちらにスタッフとして参加しておりました

MM PROJECTさんのイベント準備記録はこちらです。
「サルノベ!〜病院横町の殺人犯」イベント準備記録(長文)|【横溝文化祭】Voice & Book note

イベント第一部では「世界初の推理小説」を森鴎外が翻訳した「病院横町の殺人犯」をミステリー専門劇団 回路Rさんによる朗読劇として上演されました。
青空文庫ページはこちらです。

この話は元の話がさまざまな訳者によって翻訳されているので読んだことのある人も多いと思います。「サルノベ!」Vol.1にも康綺堂さんによるレビューを掲載しております。
読んだことないけれどアレだよね?という人も多いと思います
(サルノベに挙げている時点でまあ検討は付きますよね)

朗読劇は一観客として観たのですが、本当に素晴らしかったです!
シナリオはMM PROJECT文庫として発行されました。
こちらは限定のサイン入り版(現在品切れ)のページです。
シナリオはもちろん読んで面白いのですが、実際の舞台はもうほんとうに「回路Rの朗読劇」なのでめちゃくちゃに面白いのです!

以下、軽いレポートです。
作中描写に準じたややグロテスクな表現がありますのでご注意を。


<内容>
オーギュスト・デュパンと「私」はパリで共同生活を送っている。
ある日、夕刊と翌日の新聞に恐ろしい殺人事件の記事が載った。
病院横町のとある家にはレスパネエ夫人と娘が住んでいた。
朝の3時、家の4階から恐ろしい金切り声が響き渡り、警官と近隣の住民は玄関の扉を破って中に入った。
その時には叫び声は止んでいたが、何事かを言い争う荒々しい声が聞こえてきた。
階段を上がり、2階に上がった時には声は止み、4階の大部屋の戸を破壊して中に入ると部屋は荒らされ、中には誰もいなかった。
家具は破壊され、荒らされ、血まみれの剃刀が残されていた。だが、金目のものが奪われた様子はなかった。
暖炉に異常な量の煤があり、中を捜索したところ、娘の死体が逆さに押し込まれていた。出すには一行の4、5人が必要なほどの強い力によるもので、遺体には首を絞められた痕があった。
夫人の遺体は裏手にある小さな庭で発見されたが、喉を切り裂かれ、ほとんど首の皮一枚で繋がっている状態であり、かつ窓はしっかりと閉まっていた。
状況的に夫人が娘を殺して自殺したようには見えない。
殺人犯は一体どこから逃走したのか。
証言者たちは母娘について、その夜に聞いた「声」について語る。
警察はレスパネエ夫人の元に多額の金を運んだ銀行員ルボンを逮捕した。
ルボンに一度世話になったことがあるというデュパンは殺人事件の解決に挑む。

<メモ>
「回路Rの朗読劇」は演者の動きが特徴。
それは物理的な位置の移動であり、演者の仕草でもある。

物語は「私」の視点で語られる。
デュパンの分析能力が優れていることが観客に語られ、デュパンに説明する形で新聞記事について語る。
デュパンは警察署長と知り合いであり、許可証を得て「私」と共に現場検証をした。
いわゆる安楽椅子探偵ではなく、実際に現場を見て「私」には気付かなかったことから謎を解いていく。

シナリオにも書かれている通り、物語はポーの小説をそのままではなく、話の筋は変えていないが独自の見せ方をしている。
12人の証言者はレスパネエ母娘役の女性演者ふたりが、洗濯屋、煙草屋、銀行家、医者、警官等様々な役を演じる。声で見せる演技である。
後でパネルトークで語られたところによると、当初は背中合わせに立っていて証言者が替わる度に回転して語り手が前に出るようにとのことだったが「目が回る」となしになったそう。

デュパンは殺人犯の特徴を分析し、どんな奴を想像する?と聞く。「私」は精神病院から逃げ出したキチガイだと考えた。
ここで視点は「私」ではなく黒子の服装をした「僕」のものになる。
「僕」は麻酔を打たれたのか頭をぶつけたのか頭部に痛みを感じていて記憶が曖昧になっている。捕まって部屋に監禁されているようだが、捕まったときの記憶も、自分が何者かもわからない。力が強く、身体が頑丈な「僕」は扉を破り、隣のバスルームに入った。そこには剃刀があった。
そこに男が入ってきた。「僕」はそいつが鞭で打つひどい奴だということを思い出し、バスルームの窓を破って逃げ出した。

事件の真相が語られる。
レスパネエ夫人が、娘が、殺される残虐な場面。
演出は映像では味わえないもの。初見でこれを見て驚かない人はいないと思う。
この衝撃は個人的には映画「シン・ゴジラ」でN700系新幹線が登場した場面に匹敵!
残虐な殺人シーンなのにもうほんとうにすごい!

<雑感>
昨日(3/2)夜にデュパン役・林正樹さんのスペースで話したのですが、林さんに「あなたのハートには何が残りましたか?」と聞かれ、こう答えました。
「ヤツはとんでもないものを盗んでいきました」
ええ、この物語の殺人犯には原作を知っている人でも驚かされたでしょうし、心を奪われたでしょう!

上演後に気付いたことがありました。
事前の告知ではデュパン役が林さん、「私」役が演出・脚本も担当している副団長の森本勝海さんとまず発表され、それはまあ納得。
次に山畑恭子さん、大野陽子さんの出演が発表。マダム役と娘役の登場ということはレスパネエ母娘だろうなと思い、それはその通りでした。
母娘は死体として発見されるので演者がいるということはなんらかの形で生前のことが語られるということです。ああいう形だったとは!

その後に山田純さん、長谷川寛之さんが発表。男性のうちひとりは船乗りの男役だろうな。では残りの男性は何の役か?この話はとても登場人物(主に証言者で)が多いけれどどうなるのか?
結果として山田さんが船乗り、長谷川さんが「僕」でしたが、殺人犯の演出はもう本当にすごい!一度見たらもう忘れられない!
スペースで林さんが語ったところによると「僕」の黒子姿は某少年漫画の犯人イメージだそうです。なるほど(笑)

おまけ

今回のイベントのスーパースター、大阪からやってきたさーるちゃん師匠に教えを受ける林さんの姿(というシチュエーションで撮らせていただきました)
さーるちゃん師匠ラブリー!

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